あなたはショパンは好きですか?
ショパンを上手に弾くことに憧れている人は多いのではないでしょうか。
この記事では、
- 上手になるためにショパンの良い演奏をたくさん聴きたい
- でも誰の演奏を聴けばいいのかわからない
という方のために、ショパンを得意としているピアニスト10選(+α)の名演を
比較的聴きやすい曲でピックアップしました。
たくさん紹介しているので、今すぐ全部を聴けない時は、
ぜひブックマークをして時間のある時に聴いてみてください。
おすすめのショパン弾きピアニスト10選
①ピアニスト界の皇帝、アルトゥール・ルービンシュタイン
ご存じの方も多いであろうポーランド出身の大巨匠。
ルービンシュタインの演奏は、スタジオ録音よりもライブの方が魅力が爆発していておすすめです。
彼の演奏は、良い意味でセンチメンタルさがなく王様のような威厳があり、
現代のピアニストしか聴いていないという人でも聴きやすいと思います。
ご紹介するのは、彼の十八番の英雄ポロネーズ。
ルービンシュタインは、観客が彼に何を求めているのかをハッキリと理解しているなぁって思います。
●ソナタ2番 Op.35
②最も成功したピアニスト、イグナツ・ヤン・パデレフスキ
そんなルービンシュタインがとても尊敬していたパデレフスキ。
最も金銭的に成功したピアニストであり、ポーランドの初代首相としても有名です。
ちなみに、ショパンのパデレフスキ版は彼の名前から来ています。
(実際には編纂に関わったというより名前を貸しただけのようです)
彼の凄さはずばり音色!
およそ同じピアノから出ているとは思えないような、多彩な音色。
何だったらこれはピアノ以外の音なのでは?と思うことさえあります。
ご紹介するのは、そのとんでもない音を聴くことができるプレリュードOp.28のNo.7。
途中から教会の鐘の音にしか聞こえない音が鳴り響きます。
最近のピアノでは出せない音なので、ぜひ聴いてみてください!
パデレフスキの音色には熱狂に継ぐ熱狂です。
ため息しか出ません。
●ソナタ2番 Op.35 3楽章(葬送行進曲) & 4楽章
③ミスタッチすら美しい、アルフレッド・コルトー
そしてそのパデレフスキの演奏を「神が舞い降りたよう」と表現したフランスの巨匠コルトー。
コルトー版の楽譜を目にしたことがある人は多いのではないでしょうか。
パデレフスキ版とは違って、正真正銘コルトー自身が書いていて、
ショパンを勉強する際にもとんでもなく参考になります。
コルトーの演奏は非常に「詩的」で「知的」で、
聴いていると、その情景が浮かんできます。
コルトーは晩年の録音が多いせいか、時に「テクニックがない」と言われたりしますが、彼の芸術の前ではミスタッチなんて取るに足らない問題です。
(実際、若い時の録音を聴けばテクニックにも全く問題がないことがわかりますし。)
ご紹介するのはワルツ。
フランス的なとんでもないオシャレさで非常におすすめです。
何を食べて育ったらこんなオシャレに弾けるようになるんですかね…
●プレリュード Op.28
④唯一無二のマズルカを操るイグナツ・フリードマン
ポーランド出身の至宝、フリードマン。
彼については四の五の説明をするよりも、まずはこれを聴いて頂きたいです。
これはもう、音楽を超越した何かです。
まるで複数人で弾いているかのような立体感に、どうやってコントロールしているのか皆目見当がつかないくらい完璧なペダリング。
フリードマンは、テクニックも音楽性も非の打ちどころのない完璧超人の一人です。
⑤ショパン直系のラウル・コチャルスキ
これまたポーランド出身の巨匠コチャルスキ。
ショパンの弟子の中でも有名なミクリに師事をした、ショパン直系のショパン弾きです。
彼の演奏を聴けば、現代のショパンの演奏がいかにショパン本人が意図した表現とかけ離れているかがよくわかります。
(まぁ、楽器が当時とは全く違うので、ある程度は変わらざるを得ないのですが…)
ご紹介するのは、流れるように軽やかな幻想即興曲。
中間部も当たり前に素晴らしい!
まるで違う曲のようです。
●ノクターンOp.27-2他
⑥ショパンとリストのハイブリッド、モーリツ・ローゼンタール
ポーランド出身者、まだ続きます。
ショパンの弟子ミクリと、リスト本人に師事したという超絶ハイブリッドのローゼンタール。
その演奏は、美麗な歌心と超絶技巧の両方を見事に持ち合わせています。
ご紹介するのは彼の技巧が光るエチュード。
速いパッセージを羽のように軽やかに、鼻歌でも歌うように弾きあげています。
この時代の巨匠たちは、みんなペダリングがうますぎる!
⑦ショパン存命中に生まれたヴラディーミル・ド・パハマン
ショパン本人がまだ生きているころに生まれたパハマン。
ヴァイオリニストであったお父さんはベートーヴェンやウェーバーと交流があり、
有名作曲家たちが生きた時代を肌で感じていたピアニストです。
しかも、本人はショパンの最後の弟子ヴェラ・コログリヴォフ・ルビオに学びと助言をもらっています。
(真偽のほどは確かではないと前置きしつつ)
ショパンのお友達だったリストが、パハマンの演奏を聴いて「ショパンはこんな風に弾いていた」と言ったという逸話もあります。
ベタな曲ほど違いがわかる、ということで、ご紹介するのはノクターンの9-2。
香るようなこの歌いまわし、胸がいっぱいになります。
●ノクターン Op.72-1
⑧ショパンよりも短命の天才、ディヌ・リパッティ
ルーマニア生まれのリパッティ。
前述のコルトーがとても期待をしていた門下生の一人ですが、33歳の若さで病死しているのが残念な限りです。
リパッティの演奏は非常に明瞭で正統派なので、参考にしやすいです。
どの演奏も安心して聴いていられます。
長生きしてもらって、晩年の枯れた演奏も聞きたかったなぁ。
●ワルツ全曲他
⑨ロシアのサラブレッド、スタニスラフ・ネイガウス
名前も聞いたことがないという人もいると思いますが、ブーニンのお父さんと言えば「へぇ!」となる人もいるのではないでしょうか。
ピアノ界のサラブレッドであるスタニスラフ。
彼の演奏は「王子様」や「貴公子」という表現がピッタリです。
品があって正統派のショパンを聴くことができます。
参考にするピアニストとしてもおすすめですね。
国の情勢でショパンコンクールに出られなかった不運なピアニストですが、時代が時代なら間違いなく優勝していたでしょうね~。
⑩ラフマニノフも認めたベンノ・モイセイヴィチ
前述のパデレフスキ、フリードマンと同じ超名門の門下生であるモイセイヴィチ。
彼も超絶技巧と音楽性を併せ持つ、完璧超人の一人です。
どんな難しいパッセージも颯爽と弾きこなし、自信に満ち溢れた演奏はとても爽快で聴きやすいです。
ラフマニノフ本人に「自分の後継者」と認められているので、ラフマニノフの演奏もおすすめです。
ご紹介するのは、バラード1番。
「完璧な演奏」とはこういうことを言うんですね。
名演おまけ
10選に入りきらなかったので、おまけを二人だけ。
「自由」をピアノで体現したサンソン・フランソワ
リパッティと同じコルトーの門下生で、
酒・女・タバコ大好き、「自由を奪われたら死んじゃうマン」のフランソワ。
その演奏スタイルも自由そのものです。
自由自在のテンポ表現は好き嫌いが分かれるものの、装飾音の処理の仕方はピカイチです。
そんな装飾音の処理の仕方がオシャレすぎる名演を紹介します。
もう、なんかオシャレすぎて腹が立ってきます。
知性と教養が生み出す芸術、ゲンリッヒ・ネイガウス
ショパン弾きではないですが、ど~~してもご紹介したい名演がありまして…。
前述のスタニスラフの父であり、ブーニンのおじいちゃんと言えばもう凄さがわかるでしょうか。
あのリヒテルを始め、優れたピアニストたちを数多く育てたモンスター指導者でもあるゲンリッヒ・ネイガウス。
どうしても紹介したい名演というのは幻想ポロネーズ。
私はこの演奏に出会ってから、他の人の幻想ポロネーズを聴けなくなりました。
彼の演奏の奥深さは、あらゆる分野への広い知識と教養から来ているんでしょうね~。
いかがでしたか?
まだまだ名演はたくさんあるのですが、今回は聴きやすい曲でまとめてみました。
普段聴かないピアニストとの新しい出会いのきっかけになれば嬉しいです。
さて、これらのショパンの名曲たち。
一体ショパンはどんなピアノで作曲したのでしょう。
ショパンが愛したピアノの音色って?
最後に当サイトらしく、ピアノについてです。
ショパンが愛したピアノのメーカーと言えば、エラールとプレイエル。
それぞれの音色の特徴については、以前詳細を記事にしていますのでこちらをご参照ください。
ショパンが愛したピアノと言っても普段我々が出会っていたのは、
どんなに古くても1890年代以降のものが多く、ショパンが使っていた頃とは設計が違うものなのですが、
ご縁があって出会えたショパン時代の2台の音色をご紹介します。
まずは1842年製エラールのスクエアピアノ。
(ショパン、まだ生きてます!)
スクエアピアノなので、ショパンが弾いていたピアノとは全然違いますが、
こんな音色が溢れていた時代を過ごしたんだなと想像が膨らみます。
そして1860年製のプレイエル。
製造年はショパンが亡くなった少し後ですが、設計はショパンが使っていた時代のものとほぼ同じです。
まさにショパンが聴いていた、弾いていた、作曲した音色です。
文句なしの良いピアノ。
弾くのは大変でしたけどね。
というわけで、このプレイエルに出会った時の漫画で最後締めたいと思います。